尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

元東京都の中高教員です。映画や本、ニュースなどについて書いています。

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

レバノン映画「判決 ふたつの希望」

レバノン映画「判決 ふたつの希望」が公開されている。2017年ヴェネツィア映画祭男優賞、2018年アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。これはとても優れた裁判映画だった。シナリオも俳優の演技も優れているが、やはり中東地域の複雑な社会情勢を正面から…

劇団民藝「時を接ぐ」-満映で働いた女性編集者

劇団民藝の「時を接ぐ」(つぐ)を見た。10月7日まで。新宿の紀伊国屋サザンシアター。岸富美子・石井妙子「満映とわたし」(文藝春秋刊)の舞台化で、黒川陽子作、丹野郁弓演出。石井妙子は「おそめ」や「原節子の真実」を書いたノンフィクション・ライター…

小野正嗣の小説を読む

芥川賞や直木賞を受賞した作品ぐらい、文庫になれば読んでみたい。新人賞だから、気に入ればその後も読んでいく作家になる。最近の作品が何冊かまとまったので読んでみたが、直木賞では青山文平「つまをめとらば」が面白かった。芥川賞では柴崎友香「春の庭…

山竹伸二「こころの病に挑んだ知の巨人」

2018年1月にちくま新書から出た山竹伸二「こころの病に挑んだ知の巨人」という本の紹介。書き残してるなあと思う問題がいくつかあり、この本のことはその一つ。ただこの本の評価は僕の手に余る。だから書くかどうか考えていたんだけど、簡単に紹介しておこう…

久しぶりの奥日光

久しぶりに奥日光に旅行した。「久しぶり」と言っても、このブログを見直したら、2017年5月に行ってる。一般的には「また」に入るかと思うが、僕にはこれで「久しぶり」になる。旅行自体が半年ぶりで、昔に比べて全然行ってない。お金もヒマもないけど、一番…

ドリアン助川の樹木希林さん追悼文

東京新聞9月20日(木)に掲載されたドリアン助川の「樹木希林さんを悼む」という追悼文に、とても心打たれたので紹介しておきたい。できれば図書館等で全文を読んで欲しい。(画像で新聞記事を添付するのは著作権法上の問題があるらしいので、ここではしない…

「感謝しかありません」の不思議

「気になる言葉」というカテゴリーを作ってあるので、たまにはそれを書きたい。今年の夏に高校野球やアジア大会などを見ていて気になったことがある。インタビューで「応援してくれた方へ」と問われると、ほとんどの選手が「感謝しかありません」と言うので…

サルトルの「出口なし」を見る

シス・カンパニー公演、ジャン=ポール・サルトル作の「出口なし」(小川絵梨子演出・上演台本、新国立劇場小劇場)を見た。サルトルというより、大竹しのぶをしばらく見てないなあという程度の動機。発売初日に買った時、19日午後2時のB席しかなかった。大…

「万引き家族」をもう一度(ロケ地散歩)

是枝裕和監督の「万引き家族」に関しては6月に2回書いた。「映画『万引き家族』をめぐって①」「奪うこと奪われること-『万引き家族』をめぐって②」である。この映画はカンヌ映画祭パルムドールということで大ヒットした。僕が見た時には普段映画を見ないら…

今年最強の暴走映画「愛しのアイリーン」

公開直後の映画を見ることはあまりないんだけど、吉田恵輔監督・脚本の「愛しのアイリーン」は公開3日後に見た。ものすごく面白い映画だった。もともと新井英樹が1995年から96年にかけて「ビッグコミックスピリッツ」に連載したマンガ。(マンガに詳しくない…

追悼・樹木希林

女優の樹木希林が亡くなった。9月15日、75歳。1943年1月15日生まれなので、ちょうど75歳と8か月になる。昔ならともかく、2016年の日本人女性の平均寿命は87.14歳なんだから、まだまだ活躍してもいい年齢なのである。長らくガンで闘病中と自ら語り、ちょっと…

青春映画の傑作「君の鳥はうたえる」

佐藤泰志原作、三宅唱監督の「君の鳥はうたえる」は青春映画の傑作だった。函館生まれの作家、佐藤泰志は失意のうちに世を去り忘れられていた。数年前から相次いで映画化され、小説も文庫で読めるようになった。それをまとめて読んで「佐藤泰志の小説を読む…

熊井啓監督「忍ぶ川」を再見して

池袋の新文芸座でやってる加藤剛追悼特集で「忍ぶ川」と「子育てごっこ」を見た。今井正監督の「子育てごっご」は多分初めてだけど、熊井啓監督の「忍ぶ川」は1972年5月の公開時に上野東宝で見た。併映作品は庄司薫原作の「白鳥の歌なんか聞こえない」で、僕…

三遊亭圓朝の怪談を読む

角川ソフィア文庫から三遊亭圓朝の怪談が2冊出たので、この猛暑の夏に読んでみようかと思った。「怪談牡丹灯籠・怪談乳房榎」(ぼたんどうろう・ちぶさえのき)と「真景累ヶ淵」(しんけいかさねがふち)の2冊である。三遊亭圓朝(1839~1900)は幕末から明…

心ザワザワ、映画「寝ても覚めても」

映画「SUNNY」は社会的な「外部」を排除しているが、新鋭濱口竜介監督(1978~)の「寝ても覚めても」では「東日本大震災」が重要な意味を持って描かれる。柴崎友香の原作は2010年の発表だから、震災が出てくるはずもない。主人公が知人の演劇(金曜日のマチ…

翁長雄志とジョン・マケインー2018年8月の訃報③

沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が現職のまま亡くなったのは、8月8日のことだった。翁長知事の存在そのものが大きな意味を持っていた。翁長県政と後継者問題などをどう考えるか、その後様々な人があれこれ言っているが、僕は今まで書かなかった。月…

津川雅彦、菅井きん、さくらももこ-2018年8月の訃報②

俳優の津川雅彦が死去。1940.1.2~2018.8.4、78歳。妻の朝丘雪路が4月27日に亡くなったばかりではないか。本名加藤雅彦、父は澤村国太郎、母はマキノ智子で、二人とも俳優だった。母の父が「日本映画の父」牧野省三、叔父が有名な映画監督のマキノ雅弘。この…

ニール・サイモン、アレサ・フランクリン、ナイポール等-2018年8月の訃報①

2018年8月は有名人の訃報が内外ともに多かった。3人、4人はすぐに思い浮かぶだろう。長くなりそうだから、3回に分けることにする。日本人から書くと外国編が読まれないから、いつもと逆に書くことにする。ジョン・マケインやアレサ・フランクリンなどアメリ…

クーベリック指揮のスメタナ「わが祖国」-「定番CD」の話④

「定番CD」の話はクラシック編から始めたが、そろそろ終わりにしたいなと思う。そうすると最後に何を取り上げるか。グレン・グールドの「ゴルトベルク変奏曲」かな。若いころ聴いたモノラル盤レコードは全く判らなかったけど、後に出たデジタル録音のCDはよ…

モーツァルト「クラリネット五重奏曲」-「定番CD」の話③

8月が終わり幾分暑さも和らいだら、もっと書きたくなってきたけど、「定番CD」の話をもう少し。僕が若い時からよく聴いているのは、なんといってもモーツァルト。ビートルズやコルトレーンはCDを買い直さなかったけど、モーツァルトはレコードで持ってた名盤…

金子文子「何が私をこうさせたか」再読

金子文子(1903~1926)の獄中手記「何が私をこうさせたか」が2017年12月に岩波文庫に収録された。学生時代に読んでるけど、これは文庫で再読したいと思った。以前に読んだ本はアナーキズム系の黒色戦線社から出たものだから、一般には読んでない人が多いだ…